今次「パンデミック」では世界中で様々な「対策」が推奨されました。マスク、手洗い、3密の回避、自粛、ソーシャルディスタンスの確保、ロックダウン、ワクチンなどなどです。
私は2年前からイタリアをはじめ欧州各国や米国を観察していましたが、これらの対策がうまくいったような印象はもっておりません。感染抑制に資するというわりに、ちっともそういう様子はないのです。
私の印象はまんざら間違いでもなく、実際、これらの対策がどの程度有効であったのか、いまだにきっちりしたデータがあるようには聞きません。これは有効だという話が出ても、統計的な問題が指摘されるなどして、信頼性に欠ける話が多いのです。
その典型例がマスクです。マスクは感染症対策になると一般的には信じられており、その理由も説明されていますが、では現実世界ではどうだったかという検証となると、そこは極めて乏しい。
ここに取り上げるIan Miller による”Unmasked”という本は、専門家集団によって推奨された「対策」がことごとく失敗に終わったさまを、公表されている単純なグラフをもとに淡々と指摘しています。https://www.amazon.co.jp/dp/1637583761/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_SF2Q8V3A0KXV5JEY6R7Z
アメリカの専門家たちはマスクを多数の人が付ければ数週間から数か月で制御可能になると言っていたわけですが、もちろん現実はそんなことにはなりませんでした。
またマスク義務を解除すると、専門家やメディア、政治家が決まって批判して、人殺し呼ばわりまでしていたのですが、陽性者数が急上昇するなんてことにはなりません。
アメリカでは各州ごとに対策が異なり、タイミングも違うので、おおざっぱな比較対象実験をやっていたようなものなのです。そのため、専門家の推奨する「対策」がすべて失敗だったことが非常に明瞭にわかるわけです。
詳細は本書に譲ります。専門家やメディアが繰り返してきた断言や脅迫は見事に外れています。
アジアや日本の話も出てきますが、ここでは一点だけ紹介しましょう。
新型コロナが登場して以降、インフルエンザが流行っていないのは、マスクや手洗いなどの「感染症対策の基本の徹底」のためだと言われています。
本当でしょうか。
著者はマスク着用率の低いスウェーデンと日本を比較しています。次のグラフを見てください。
日本のマスク着用率は常に100パーセント近いですが、スウェーデンはせいぜい20パーセントです。
そこで2020年から2021年にかけてのインフルエンザの流行は次の通りでした。
2020年春の流行が収まったあとは、スウェーデンも日本も、マスク着用率に関係なくインフルエンザは流行しなかった。これが事実です。
これはなぜなのか、というのは様々な議論があるはずで、のちの研究を俟つべきだと思いますが、事実はこの通りなのです。
新型コロナウイルスが現れる前までは、マスクは風邪やインフルエンザのウイルス対策としては無効であるというのが常識でした。この2年で話が変わったわけですが、実は以前の常識が正しかった、というのが素直な議論になるはずです。
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重要なことは、本当に有効かどうかわからない、有効であるとしてもどの程度有効であるか、あるいはデメリットにどういうものがあるか、そしてそのメリットとデメリットのバランスはどうなのかという議論が一切なされていない、ということです。
このような極めて重要な議論を欠いたまま、欧米では様々な「対策」の義務化や強制が行われ、いまだにまともな反省はなされておりません。
私は、「致死率0.01%になったから、『感染症対策の基本の徹底』をもうやめろ」と書きましたが、これは不正確だったと今にして思います。
http://takinstitute.com/wp/?p=392
致死率が0.01%だろうがなんだろうが、有効かどうかよくわからないものを社会一般に強制するのは全く間違っている、たとえ有効性が確認されるとしても、個人の自由の範囲は限りなく広く保証されるべきだ、であるならばなおさら、「感染症対策の基本の徹底」がさも有効であるかのように継続することは断じてやめよう、と言うべきでした。
個人個人で好きな「対策」をするのはかまいません。他方で、社会的に行う対策はそういうわけにはいきません。本来、その峻別をするべきなのです。
科学に従え!Follow the science! と何度も言われました。しかし、科学というのは、仮説をたて、現実を観察し、仮説を修正するのが科学です。
こうあるはずだという理論・仮説から出発し、現実が理論通りにいかなければ現実がおかしいと考えるのは、科学でも何でもありません。それは宗教です。
アメリカのメディアにしょっちゅう出ていた専門家のアンソニー・ファウチは、「ワクチン接種率が上がれば、これまでのような感染者数の上昇は見られなくなる」と言っていましたが、現実はそんなことにはなりませんでした。でも、修正も検証も一切されておらず、言いっぱなしのまま終わっています。
真に科学的な態度とは何か、欧米を反面教師とするべきだというのが私の結論です。