紹介する記事自体は短い話ですが、これがローマの日常なので、見てもらいましょう。
いつもローマのニュースを伝えている “Roma Today” が、読者からの訴えを取り上げています。タイトルは「私たちが暮らしているサン・ロレンツォでは毎晩どうなっているかを理解してもらうための30秒のビデオ」となっています。
あれこれ言わずに、まずは見てもらいましょう。
http://www.romatoday.it/social/segnalazioni/video-movida-via-degli-ausoni.html
金曜日から土曜日の深夜にかけての光景で、下には「市長、今すぐどうにかしてください。私たち住民はもう耐えられません!」と書いてあります。
どういうことなのか説明しましょう。
サン・ロレンツォというのは、ローマの東部、テルミニ駅のすぐ北側に広がる地区です。ローマ七大聖堂の一つ、サン・ロレンツォ・フオリ・レ・ムーラ大聖堂があることから、この名前がついています。サン・ロレンツォの大聖堂は、日本のガイドブックにはあまり書いてないのではないかと思いますが、それもそのはずで、1943年7月19日の空襲の際に古い教会は大きな損傷を受けてしまい、現在の建物はオリジナルをできるだけ生かしたものになっているとは言いながら、戦後になって再建されたものです。
サン・ロレンツォの大聖堂のすぐそばには、ヴェラーノ墓地があり、ここには数々の著名人が眠っています。例えば、映画監督のヴィットーリオ・デシーカ、ロベルト・ロッセリーニ、俳優のマルチェッロ・マストロヤンニ、作家のアルベルト・モラヴィア、ASローマのオーナーであったフランコ・センシなどなど。
また、この地区には飲食店がひしめいており、すぐ近くにはラ・サピエンツァ大学があることから、夜遅くまで楽しんでいる若者たちでにぎわっています。観光客が行くような中心街のお店とは違って値段が割安なので、地元のローマ人たちはサン・ロレンツォで楽しい一時を過ごすのです。
さて、ローマで、友達と夕食に出かけるとしましょうか。楽しく食事をしながらおしゃべりをして興じるのですが、名残惜しくてなかなか話が終わらないというのが人情です。そこで、しばしばバールなどに行ってビールなどの飲み物を買い、外に持ち出して、立ったままおしゃべりを続ける、というのが常なのです。
もちろん、おしゃべりしている当人たちはそれで結構ですが、周辺の住民にとっては静かな夜は訪れないことになります。夜の12時をまわってもまだやかましければ、これが連日続くわけですから、いい加減に耐えきれなくなるでしょう。
それが、上のビデオです。サン・ロレンツォの住民が、静かな夜を返してくれと言って、たまりかねてビデオに撮ったわけです。
この住民は市長の介入を求めていますが、実際私がローマにいたころは一時期、夜の11時以降、アルコールを店から持ち出して外で飲むことは禁止されていました。
しかし、バールなどの飲食店からすれば売り上げの問題に直結し、消費者としては楽しみが減ってしまうので反対意見も根強く、規制が撤廃されたかそれとも有名無実化したか、とにかくビデオのような有様であって、私が日本に帰ってくるころには元の木阿弥でこうなっていました。
この際、ことの是非は論じないことにしますが、観光客には見えにくい、ローマの日常の一端を感じてもらえればと思います。これがローマです。
(東海)
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