イタリア人は食事にうるさい人たちです。先月、日本旅行にやってきたイタリアの友人たちが京都で花見をしたときも、12時頃になるとお腹がすいて、何を食べようかと話し出したんですが、自分たちで、
「イタリア人は腹時計が正確だ」
と言って笑っていました。
そこでカルボナーラです。
日本でもスパゲッティ・カルボナーラは非常に有名でもっとも人気のあるパスタの一つです。
しかし、カルボナーラの正しい作り方は、依然として日本では普及していないように思います。ここにもっともオーソドックスでシンプルなカルボナーラの作り方を紹介します。ポイントは「生クリームは絶対に使わない」です。日本でしばしば信じられている「カルボナーラはクリームソース系のパスタ」であるというのが、まったくの誤解、重大な間違いです。それだけは絶対にやってはいけません。
1 卵とパルミジャーノやペコリーノチーズを混ぜておきます。
2 フライパンにオリーブオイルを入れ、パンチェッタ、あるいはグアンチャーレを低温でじっくり炒めて、豚肉のうまみを引き出します。
3 パスタを湯がきます。
4 ゆで汁をフライパンに入れて乳化させつつ、豚肉の旨味をさらに煮出していきます。塩味を確認して整えます。
5 パスタがゆがけたら、ザルにあげて、すぐにフライパンに投入。ソースをパスタに全体に絡めて、最後にあらかじめ用意しておいたチーズを溶かし込んだ卵とあえます。卵に火が通りすぎないように、火加減に注意します。
6 皿に盛りつけたら、上からさらに粉チーズと黒コショウをふりかけて出来上がり。召し上がれ。
これが、もっともシンプルなカルボナーラの作り方です。
ところが、日本ではこの作り方が普及していません。なぜかというと、一つはこの通りに作ると非常に濃厚になるのですが、日本人の口にはやや重すぎる嫌いがあって、生クリームでマイルドにしているのであろうと思います。
また、「とろとろ」の食感にするために、生クリームやミルクなどを使ったほうが作りやすいということだと思いますが、火加減に注意して、スパゲッティーニやカペッリーニなどの細いパスタを使わなければ、失敗するということはまずありません。なにより、豚肉の旨味をちゃんと引き出していれば、卵が少々モロモロになったところで十分に美味しいのです。
ローマの人間によれば、生クリームの類は絶対に使うべきではない、という話になるので、日本人が思い描いているカルボナーラは全く論外の代物、というべきであるということになります。
ただし、食事のことだけはやたらうるさいイタリア人のことですから、それぞれの家庭、作り手によって、レシピは極めて多様です。玉ねぎをいれる人いれない人、ニンニクを使う人使わない人、全卵にするか黄身だけにするか、どのタイプのパスタを使うか、などなど、変数はたくさんあります。
さらに、私にカルボナーラをごちそうしてくれたローマの友人カップルは、卵に少しミルクを入れていました。びっくりして、
「ミルクを使うの?」
と質問すると、
「うん、うちのカルボナーラはミルクを少し使うけれど、これは普通の作り方とはちょっと違う」
と言っていました。
つまり、こういう作り方はあくまで例外で、カルボナーラにミルクや生クリームを入れることはまずないことだと断じてよろしいのです。
(東海)
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