イタリア人の姫路旅行記

久しぶりにブログの更新です。何を書いたら良いか、材料がなかなか見つからなかったのですが、幸い一つ、見つけました。昨年日本を旅行したイタリア人の旅行記です。その際に彼は姫路を訪れており、ちょうどその部分がアップされたことをFacebook 経由で知りました。面白いので、著者の許可を得たうえで、日本語に訳してみることにしました。以下、全文です。誤訳などはご容赦。

元記事 http://www.nihonjapangiappone.com/wordpress/2014/06/26/8gg-il-castello-himeji-ed-il-giardino-koko-en/

 

8日目 姫路城と好古園

今朝は有名な城を見に姫路へ向かう予定。適当な時間に起床、いつものようにとてもお腹がすく。

このホテルは朝食がたっぷりしている。自分が取ったのは、魚とミートボールを少し、スリミ(訳注:カニカマのこと)、ケチャップだらけのたまご、いろんな漬物、味噌汁、オレンジジュース、梅干しひとつ、カフェ・ルンゴ、ご飯を一膳、どうしても食べてみたかった納豆。
取ったものは全部食べてしまうと、再びビュッフェへ戻り、マーマレードをつけたトーストを用意した。ヴァカンスは、僕のお腹が減るという奇妙な効果を引き起こす。

日本人から学ぶべき良い習慣の一つは、手拭いだ。手拭いとは、いろいろな大きさの生地によるハンカチで、男も女も、「アツイ」つまりうだるような暑さの時期にいつも使うミニタオルのようなものである。この不思議な道具で、ひどい気候でも大して気にならず、乾いているような気分になれる。女性たちはバッグのなかに入れて持ち運んでいて、目立たないように気を付けながらそれを利用する。男性はもっとぞんざいで、ズボンのベルトにかけておいて、とりわけしんどい仕事をするときには首に巻いたり、額に巻いたりする。
この汗拭き用のハンカチを発見してからというもの、100円ショップでたくさん買わないわけにはいかなくなった。
慣れていない自分にとっては、地下鉄の中でもこれは必需品だ。エアコンから落ちてくる冷たい水滴が、汗で濡れた首にかかるのを防ぎたいから。

大阪の地下鉄は、もしもツーリストパスでJRを利用していなければ、大変な出費になる。難波から新大阪まで7駅に停車するが270円(約2.5ユーロ)もする。そのうえ切符の料金を計算することや、駅名の漢字が分からなければ乗るべき路線を見つけることが難しい。なにせ東京と違って、旅行者向けの表記がない。地下鉄の職員に直接聞いて助けてもらわないといけない。僕たちが会った職員さんは、いい日本人で、券売機でちゃんと券を買わせてくれた。

今日は土曜日で、街は静かだ。ようやくマスターカードでお金を引き出した。コンビニではお金はおろせない。

駅につくと、初めて「ベントー」を列車の中で食べてみることにした。どれにすればよいか、選ぶのが難しい。たくさんあるし、どれも美味しそうだ。
ガラスケースのなかには見本が並んでいて、本物そっくりである。そうと知らなければ、偽物のエビのてんぷらを本物だと勘違いして食べてしまいかねない。

それぞれ箱には値段がかかれている。800円から13000円の幅があるが、さらにはカロリーまで書いてある。体型を維持したい人には非常に重要な情報だ。
僕たちは2つで1800円(16ユーロ)するのを買い、これで列車に乗り込む準備が完了。

駅にあるショップには、まったく不必要だがとても素敵な小物やアクセサリーが無数にある。取り換え可能な色付きの柄がある傘、トーストに楽しい形をつけるための型、笑顔の形をしたナイフ、ようはそういうものがたくさんある。
棚から、頭の大きなサムライの形をしたペンダントが私を見ている。これは抵抗できない。すぐに買った。
すぐさま彼には敬意を表してムサシと名付け、カメラの入ったリュックにかけた。これから旅の良い友になってくれるだろう。

新幹線はきわめて正確で、僕たちは、乗るべき車両の番号が書かれた線のところで、僕たちの数センチ前のところにあるドアが開いて車両にのせてくれるのを待っていた。時刻通りに座席に座り、目的地へと出発した。

停車駅ごとに、アナウンスの前に音楽が流れてうんざりする。僕たちと同様、日本人もこれは大嫌いだろうと僕は確信している。

姫路駅では、駅員は皆、深く深くお辞儀をしてくれるのだが、これにはまだ慣れることができない。
イタリア人としては自分は単なるお客にすぎない。しかし、彼らは客のおかげで彼らの仕事が保証されていることをよく分かっていて、だからできる限り親切でいようとするのだ。

姫路城は2014年のはじめまで修復中らしい。もちろん、僕たちはそんなこと全然知らなかった。駅から城に向かって路上に出て、カメラをズームにしたら、足場があることに気が付き、それで今日になって初めて知ったのである。

駅から城まで数分で着くようにバスがあるらしいが、しかし僕たちは石畳を行く辛抱強いサムライだ。だから、ガンガンに照っている太陽のもと、ひょっとしたら泳げるんじゃないかという湿度のなかを歩いて行くことにした。

城の広場は巨大だ。そして、今日の太陽は、グリルの上の炭のように僕たちを焼いてしまいながら、その力を存分に僕たちに見せつけてやろうと決めてしまっていた。
自分が気に入るような帽子はまだ見つからない。だから参ってしまわないように頭の上に小さなタオルをのせて歩いた。湿度は到達しうる最大限に高いところをかすめていて、太陽に照らされた冷たいボトルのように汗をかく。水、緑茶、カルピスをいくら飲んでも、まだ信じられないくらいに喉が渇き続ける。

城はほとんど何も見えない。足場から覗く横脇にある建物、瓦、そして修復に使われる山と積まれた大量の材木。
もし最初から知っていれば、この太陽の下、こんな旅行はしなかった。大阪の街中を静かに散歩でもしていたのだ。たぶんホルモンの串焼き屋でも探して。
この旅行の一番よかったところは、城の右側にある歩道を裸足で歩いたことくらいだ。

もう完全に汗でびしょ濡れになってしまった。もし私のように本当にやむを得ないということでないのであれば、8月の日本でヴァカンスを過ごさないように、皆さんにはおすすめする。

わずかの平安と涼を求めて、僕たちは城の脇にある有名な好古園を訪れることにした。庭は大変に美しい。どこを見ても素晴らしい眺めにうっとりする。こけむしたところ、もう角がとれてしまった岩でできた小さな滝、釣りキチ三平が幸せになるであろう色がついた鯉がたくさんいる池、木々の間を通る砂利道、澄んだ水の上を渡す石の橋。

道沿いには、素晴らしい木造の東屋が点在していて、休息所になっている。そこで、ちょっと座って、物思いにふけったり、おしゃべりをしたり、あるいは単純に、東屋を囲む景色の美しさを嘆賞することができる。
セミの鳴き声はこの時期、耳をつんざくようで、僕たちに息をさせてくれないうだる暑さに彼らも音を上げているかのようだ。
もし時間が許すなら、もう少しとどまって、この小さいが完璧な世界に閉じ込められたあらゆる美しさを嘆賞しているに違いない。でも、この天気のせいで僕たちも意気を喪失してしまった。だからとにかく動いて、行くべきところへ行かなければならない。

駅へと戻る道すがら、少しの時間をショッピングにあてることにした。エレガントな着物の店に入り、ゆかたを買う。黒い生地に赤い花のゆかたはシモーナのため、緑のは僕の、もう一つは女友達に贈る結婚祝いのプレゼント。
店内は、まるで時代をさかのぼったかのように古い内装をしている。家具は、時間によって黒ずんだ厚い木でできていて、着物を着るところは一段高く大きな畳のところにあり、まるでプライベート・シアターで演技でもしているようだ。かたわらにあるのは、模様の入った木でできた折り畳みのできる提灯、金の細工が入った日本の古いテーブル、全身を見られるよう、傾きをつけることができる大きな鏡。
店は大きいが、光は乏しい。ただ売り場の大事なところだけを照らすのみだ。
支払いは、赤い皮の張られた古い椅子に座って、天板がクリスタルの大きな机のうえで済ませる。まるで、明治時代のアトリエが現在にやってきたようである。

礼儀正しさが際立っている。そこにいる売り手の三人は、ゆっくりしていて、細部に非常にこだわる人たちで、いささかもゆるがせにしない。

浴衣をたたむのに、僕には永遠に続くかと思われた時間を要した。すべての角は完璧でなければならず、すべての折り目は先の折り目と正確に同じでないといけないし、包装はもう開封されることはないんじゃないかというくらいに完璧でないといけない。
ゆかたは、路上の屋台でみかけるような安物じゃない。それは、生地を触ってみるだけでも分かる。本当にエレガントで質の高い物を手に入れるのに、それだけ出費がかさんでもそれは値打ちがあるというものだ。

ちょっとよく分からないのは、ここ姫路では人々はエスカレーターの右側にたっていて、東京のように左側じゃない。でもたぶん、いつか、こんなことも分かるようになるのだろう。とにかく、新幹線にのって大阪に帰ることにする。夜はもう近い。

ここ日本でも、地下鉄に乗る人たちはローマと同じような振舞いをする。エスカレーターのすぐそばのドアに殺到して、いちばん混んでいる車両に乗ろうとする。先頭車両の方にいけば、座席に座って心地よく移動することがいつでもできる。

大阪に戻って、僕たちは例によって夜の散歩に道頓堀を歩き、ホテルからそう遠くないところでお好み焼きを食べることになった。お好み焼き屋の優しい女主人は僕たちにお好み焼きを作らせてくれない。よく知らないと思ったんだろう。だから、出来上がったお好み焼きが直接僕たちの鉄板に供されることとなった。

おかしなことに、そばのテーブルに座っていた日本人のカップルは二人でたった一つのお好み焼きを全部食べられなかったのに、僕たちは二枚をあっという間に平らげてしまった。たぶん、彼らはお互いのことが好きすぎて食べ物のことを考えられないんだろうが、僕たちは食べ物が好きすぎる。

今のところ、日本で一番美味しいお好み焼きを食べたわけだが、しかし他のお好み焼きを試してみる時間はまだある。

 

(東海)

Laboratorio Linguistico Italiano(イタリア語ラボ)

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