Salone del Gusto e Terra Madre 2014

去る10月23日から27日まで、イタリア・トリノにて スローフード協会主催により“Salone del Gusto e Terra Madre 2014″ が開催されました。イタリア全土から、また世界各地から様々な地域の食品が一同に会する、2年に1度行われる大イベントです。

私は、縁あって播磨スローフード協会 の会員になっています。トリノでのイベントに播磨スローフード協会が参加するとのことで、このたび同行メンバーの一員としてトリノを初めて訪れました。

トリノはポー川の流れが大変に美しい街で、人々も総じて穏やかで静かだなという印象を持ちました。朝からバールで大きな声でガヤガヤと話し合っているローマと全然違います。

イベント期間中、トリノは ”Salone del Gusto e Terra Madre 2014” の話題で持ち切りで、トリノの主力紙 La Stampa も連日特集を組んでおりました(記念に新聞の切り抜きもとってあります)。

”Salone del Gusto e Terra Madre 2014” では、私はほんの少しばかりお手伝いさせていただきました。が、しかしイタリア語に困った時にイタリアの友人たちがネットを通じて私を助けてくれました。彼らのおかげで何とか切り抜けることができたと、本当に感謝するばかりです。

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さて、今回のイベントにはプログラムが事前にネットにアップされていました。そのプログラムの前文が興味深いものであったので、私が日本語訳にし、播磨スローフード協会の同行の方々に資料としてお配りしました。

ここでその日本語訳の全文をあげておこうと思います。

オリジナルのイタリア語版プログラムは現在別のものに差し替えられているので、保存しておいたファイルをアップします。→イタリア語版プログラム

このイタリア語版プログラムの2・3ページの部分を日本語訳したもののファイルもアップしておきます。→ 日本語訳バージョン

では、日本語訳をここに張り付けておきます。誤訳・意訳などはご容赦ください。

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食されるべき食物 救われるべき食物

本年は国際連合より2014国際家族農業年とされました。しかしただ喜んでばかりはいられません。これまで家族農業は、文化という麗しい控室に控えているばかりで、表舞台に出ることはありませんでした。国際機関が家族農業を祝うからには、私たちは決してことを軽く考えてはなりません。味の方舟とともに、家族農業が、サローネ・デル・グスト&テッラ・マードレ2014 における二大テーマの一つとなるゆえんはここにあるのです。

「緑の革命」が到来したのは数十年前のことです。これは単作農モデルと、合成化学や機械化された労働力に基づいた農学を生み出しました。すると家族農業は、その時代の人口に対応できないものだと考えられ始めます。人口は増え続ける一方で、都市・産業区域を拡大せずに耕作可能地を広げるわけにはいかないからです。これに対して今日おかしいものはおかしいと言うことができますが、それには経済、政治、教育、環境、知性、生産、あらゆるレベルの抵抗をし、それに数十年を要したのです。

 家族農業と、産業として設計された農業は、ただ規模が違うというだけではありません。なにより農業についての考え方の相違が、規模の問題となって現れるのです。まず産業化した農業は単なるビジネスです。世界には、アグリビジネスという用語が使われる場が存在します。利益優先、ひたすら市場志向で、売れる商品を生産する。市場とは、ここでは単一な市場のことで、すなわち商品取引、大規模流通の市場であり、輸出市場であり、食物が「商品」と呼ばれるような市場。そのような市場では、自然の時とかけ離れて、エネルギーと化学物質が投入されるような方法で均質かつ大量に生産されなければなりません。土地は無理なリズムで働かされねばならないのです。工場式育成法で育てられた動物についていえば、いかに容認しがたい環境の下に動物たちが押し込まれているか。そこでは、自由、健康、そして空間が否定されています。土地(“terra”)と地球(“Terra”)を、大きく、繊細で、複雑な、一つの動物として考えてみたらどうでしょうか。産業化した農業は、取り入れた野生種の多くを絶やしてしまい、大地を化学物質で溢れさせ、水を汚染し、深く耕すことで土地を傷つけ、合成物を使ってリズムを加速させる。。。そして、私たちが口にするものは、こういったことすべての結果です。しかし、アグリビジネスにとって大事なことは、私たちがそれを食べることではありません。私たちが買ってくれさえすればそれでよいのです。

 他方で家族農業は食物を作ります。中心にあるのは、食物を食べる人間と、そして農家とともに季節ごとに働く大地です。そこでは販売される物ではなく、食べられる物を作るのです。大事なのは収穫を得ること。そのためにできる限り多様化し、自然のリズムに逆らおうとするのではなく、従おうとします。ジャガイモだけでなく、トウモロコシもインゲン豆もその種をまく、なぜなら気候のために、こういった食物のうち一つがダメでも、別のものには適しているはずだからです。野菜だけでなく、花やハーブも育てます。なぜなら、虫や寄生生物が野菜をダメにしないようにするためです。家族農業の背景にあるのは、資本社会ではなく、あくまでも農家。彼らこそ、自分たちの生産物を家族と一緒に最初に口にするはずです。市場もあります。しかしそれは複数の市場、すなわち近郊の市場であり、あるいはまた GAS(「連帯購入団体」)、インターネット販売、共同の商店といった代替市場でもあります。

 家族農業が称えられなければならないのは、地球上の人々が口にする食物の80パーセントを生産しているからです。これらは食べられる物であって、商業化されたモノではない、ということに注意していただかなくてはなりません。人は、総売り上げのグラフで空腹を満たすことはできません。お皿に何物かがなければならないのです。また家族農業は政治的にも称賛され、優遇され、支えられるべきです。なぜなら、家族農業のおかげで、絶滅の危機にある食物を列挙するというスロー・フード「味の方舟」のような企画が、雑多な思い出のリストに堕すのではなく、実現可能なプロジェクトのリストとして残ることができるからです(例えばスロー・フードのプレシディオはこのようなリストに起源を有します)。10月23日から27日まで、トリノ・オーヴァル・リンゴットの空間は、全世界からやってくる数千をこえる生産品を迎え入れます。そして味の方舟に乗船してもらいます。これは、生物多様性を守る闘いです。方舟の次の乗客として救いたい、候補に挙げたいと思う食物を持ち寄ることで、すべての訪問者がこの闘いに参加することが可能になるでしょう。

 家族農業は、この星を救うものとしてではなく、いままでこの星が滅びてしまわないようにしてくれたものとして捉えられねばなりません。私たちはサローネ・デル・グスト&テッラ・マードレ2014 にて皆様をお待ちしております。理解するためにまず、作って、味見して、話を聞いて、そして語りましょう。

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